地域おこし協力隊サポーターからのメッセージ

「プチットジョア」代表 伊藤雅訓さんは、結婚を機に山元町に移住し、2015年5月に山元町で初となる洋菓子店「Petite Joie(プチットジョア)」を立ち上げ、地元の旬の食材をふんだんに使った美味しいケーキなどの洋菓子が人気を博しています。山元町内での事業者との繋がりや過去の協力隊へのサポートをしてきた経験を踏まえ、地域おこし協力隊へのメッセージを伺った。

山元町で子供の頃からの夢だった洋菓子店を開業

私は、子どものころから卒業文集で「自分のお店を出したい」と書いていたほど、20代で自分の店を持つという夢を持っていました。

調理科のある高校に進学し、途中までフレンチを学んでいましたが、3年生のころ、学校に新しい調理室ができたことをきっかけに、ホテルのパティシエを講師に招いた製菓や製パンの特別クラスが設けられ、料理と製菓とのあまりの違いに衝撃を受け、そこからは一心不乱にケーキ漬けの毎日を過ごしました。

その後、結婚を機に山元町に移住し、2015年5月、29才の時になんとかお店をオープンすることができました。実は山元町で初めての洋菓子店だったようですね。

震災から4年、特別ではない普通の喜びを届けたい

なんとかお店をオープンさせることは出来ましたが、夢を諦めたくなったこともあります。震災が起きて思うようにいかないことも多く、気持ちが折れそうになりました。

当時、震災の影響で沿岸部には瓦礫がたくさん残っている状態でしたが、町には「落ち込んでいてもしょうがない」という機運が高まり始めた頃でした。そんなタイミングだったので震災復興のためにオープンしたとか美談にしたがるマスコミなどの取材がすごく多かったんですが、取材を受けてしまうと震災復興という特別感が出てしまいそうで断りました。

私の願いは単純で、「山元町に初めてのケーキ屋ができたみたいだよ」と、皆さんにワクワクしてもらえることだけでした。特別感ではなく、新しいお店ができて、少し噂話で盛りあがれるような、そういったなんでもない普通の喜びが、あの時の山元町にとって1番大事だったのではないかと感じていました。

山元町は「何もない町」なんかじゃない

結婚を機に移住してきた時にご近所に挨拶回りをしていたら「何もない町に来ちゃったね」と言われたことにすごく違和感を感じました。いちごや、いちじく、りんごなど、色々なものがある土地なのに「何もない」って言われたことが、なんだか悔しかったんです。

でも掘り下げれば、果物を加工して、色々な形で見せてくれる人がここにはいないということに気がつきました。“自分がこの町の魅力をさらに輝かせる役目を果たせられれば”という気持ちで「プチットジョア」を始め、今年8月には、ずっと商品開発に携わっていた「やまもと夢いちごの郷」で、二号店「プチットジョア・ストーリーズ」もスタートしました。

地元らしさにあふれチャレンジできる場づくり

「プチットジョア」では、これからも今までと変わらず、皆さんのご意見をもとにケーキをどんどんブラッシュアップしていきたいなと思っています。

二号店のある「やまもと夢いちごの郷」では、過去に地域おこし協力隊として、山元町に赴任していた方が、現在も2ヶ月に1〜2回、農家のお手伝いに来ていましたが、本格的に移住してくることもあり、農家さんと彼と一緒に小規模なイベントなどを積極的に行なっていきたいと考えています。

イベントでは、今農家さんと開発している商品のテスト販売など、いろいろなことを試せる場にできればと思っています。「やまもと夢いちごの郷」は、そういう地元らしさがあふれていることが魅力なので、ここならではの楽しみがある場所にしたいですね。

地域とのコミュニケーションをサポート

地域によって人との距離感は違うので最初は人との距離感が掴めなかったり、言葉のニュアンスやリテラシー、思考の違いによって上手く言葉が伝わらなかったり、戸惑いや不安を感じることがあるかもしれません。

私も移住してお店を営んでいるため、そこら辺は経験上、理解できるのでサポートしていきたいと思っています。若い子とか、頑張ろうとしている人達が、その単純なすれ違いでモチベーション落としてしまうことは、見ていてあまり気持ちのいいものではないですので。

また、山元町は比較的、新しいことに対して、動きやすく協力的な人が多いと感じます。他の地域だと、新しい取り組みに口出しをして障害になる人がいますが、山元町は本当にそういった人が少なくて、柔軟に話を聞いてくれて応援してくれる方が多いですね。

もし人とすれ違うようなことがあったら、私に相談してください。少し緩和することができるかもしれません。