2019年に山元町に生まれた「おひさま村農園」は、果樹やさつまいもの生産・加工を行うほか、人々が農業体験できる場として多くの人が集う。利益創出が難しい農業から、新たな体験価値を発信する。株式会社おひさま村の鈴木仁一代表は、今回の地域おこし協力隊募集で掲げる「ワクワクする地域づくり」に共感し、実践している一人だ。「おひさま村農園」のこれまでと現在地を見つめ、鈴木代表が描く今後の展望を伺った。
■ このプロジェクトパートナーと取り組むミッションは下記から
「山元町まるごと観光・体験農園化計画を推進するプロジェクト担当者を募集!」
おひさま村が目指す“ワクワクする地域づくり”
私が小中学生の頃の山元町の人口は確か、1万6、7千人ぐらいだったと思います。でも時を経て、震災の影響もあり、今は1万ちょっと。やはり、人が少なくなくなってきて寂しい。だから山元町を盛り上げたいーー「山元町ってなんだか面白いね」とか、「あそこに行くとこんなワクワクすることがあるよ」とか、そういう地域を作っていきたいんです。地域の人や山元町に来た人に幸せな気持ちになってほしいというのが、一番の目標です。
山元町は気候や土壌が良く、いちじくやいちご、ブルーベリーなど、さまざまなフルーツの栽培に適しています。また、沿岸部の被災したエリアには広大な土地があるので、さつまいもの栽培も行っています。
私たちは、大量に生産をして、大量に出荷することを目標にしてはいません。山元町に人が来る流れを作って行きたいので、生産者自身がまず楽しんで生産をする。そして、ここに来てくれる人にも楽しんでもらいたいので、「モノ」そのものを売るというよりは、体験=「コト」に力を入れていこうという考え方でスタートしました。今では小学生からお年寄りまで、幅広い層が農業体験をしに来てくれるようになりました。みんなで農作業をしたり、話をしたりして、素敵な笑顔で帰ってくれることが何よりも嬉しいのです。
「モノ」ができる背景を知る「コト」体験
今はスーパーやネットで簡単にモノが買える便利な世の中です。食材が届いて食べれば、もちろん幸せな気持ちにはなります。でも例えば「いちじくって、どんな木にどういう風に実をつけるか、どんなふうに栽培管理されているのか」ということを、実際は知らない人が多いのではないでしょうか。実際に栽培風景を見てもらい興味を持った人の中には、「作業を手伝わせてほしい」と言ってくれる人もいます。山元町に来て、実際に体験をして、その時にしか楽しめない食べ方をしてみることで、「モノ」ができる背景を知るーー同じいちじくを購入するとしても、今までと違った感覚で買い物をすることができれば、その人の人生も豊かになると考えています。
大切なのは「人」と「人」とのつながり
生産して出荷するプロセスの一つ一つに、必ず人が存在します。だからこそ、関わる人との繋がりを大事にしています。できるだけ農業を題材として、その場に足を運び、その瞬間を楽しめる、ワクワクするーー関わる人たちみんなが幸せな気持ちになるようなことをしていきたいです。
「おひさま村農園」は、昔からの仲間や専門家など、この農園でやっている取り組みに興味を持ってくれた人たちが定期的に手助けをしてくれてここまで来ました。「地域を盛り上げよう」という気持ちでみんなが集まり、ありがたいことにとても楽しそうに協力してくれます。他にも地域おこし協力隊が来てくれたり、僕にはないすごい才能を持っている人たちのパワーに支えられています。以前、協力隊として来てくれた人は「おひさま村農園」のホームページを作ってくれて、今でもちょっと不具合が出たりするとすぐに修正してくれます。協力隊としての活動は1年だけでしたけど、今でも年に何回も足を運んでくれるんです。ここに集まる人たちがみんな「気難しい人がいないし、居心地が良い」と言ってくれるのは私の誇りです。
新たな雇用を生み、移住者が安心して生活できる町に
人が集まる町にするためには、ここならではの魅力がないといけないし、移住して来た人が生活を継続するために働く場所がなければいけません。今私たちが考えているのは、農業で利益を上げて、この地域に越してきた人たちが共に楽しく仕事をできる環境づくり。一度にたくさんとはいかなくても、少しずつ新しい雇用を生み出したいと考えています。
10年ぐらい前から6次産業が話題ですが、小さな農家が加工場を持ち大量生産するのは、なかなか難しいのが現実です。だったらできるだけ身近な人たちと手を取り合い、いわゆる農商工連携という形で発展する方がずっと楽しい。おひさま村農園のフルーツは「プチット・ジョア」という洋菓子店でスイーツの素材として活かされています。魅力的なことをやって、こういった形で、地元の人々と協力しながらワクワクが循環するような町づくりを目指しています。
「地域おこし協力隊」に求める人物像
人それぞれ、得意なことも、苦手なこともあると思います。だから、私が得意とする農業については詳しくなくても構いません。素直で物事に真剣に取り組んでくれる人、自分の意見を持っているような人にぜひ会ってみたいです。以前来てくれた協力隊員は、人の話をきちんと聞きながらも「こうしたらどうでしょう」と、彼目線のアイデアを提案してくれて、彼から学ぶことばかりでした。「おひさま村農園」では栽培・管理や販売について学べますが、何より「農業っていうのはこんなに大変なんだ」という現実や、人と人との繋がりの楽しさ、そして仲間と一緒に挑戦したり、新たな発見ができるワクワクを伝えられたらいいな、と思います。
「おひさま村農園」としてまず必要なのは、認知拡大。この農園を知らない人のために、積極的に情報発信していきたいと思います。今もフェイスブックを更新していますが、もっと多くの人に知ってもらいたい。地域おこし協力隊の方には、そういったソーシャルメディアで、実際に体験した人にしかわからないような農業の大変さや楽しさ、魅力を立体的に発信してもらい、「こんなことを体験農園でやったら面白い」など新しい視点で企画・実行してくれると嬉しいです。また、「おひさま村農園」だけでなく、山元町全体を盛り上げてくれるような人が来て、みんなで素敵な町づくりの輪を作っていきたいですね。