宮城県山元町では、昨年4名の地域おこし協力隊を採用し、協力隊によるさまざまなプロジェクトが本格的に始動しました。この取り組みの背景には、人口減少や高齢化による地域事業の担い手不足があり、地域おこし協力隊による新しい視点で町の魅力を発掘し、これまでにない新たな地域文化が育むまれることで、町内外の人々が「いきいき・わくわく活躍できる町」を目指し、町に人を呼び込んでいきたいという想いがあります。
そして今回、新たな隊員のポジションとして、地域おこし協力隊事業の成長の要となる「コーディネーター」の募集を開始します。
今回は、山元町における地域おこし協力隊の採用から着任後のフォローといった一連の業務を担ってきた山元町役場の阿部から、このポジションのミッションや、期待する事を一問一答形式でご紹介します。
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【R6年度中着任】山元町の課題/ミッション発掘とプロジェクトの企画・隊員の伴走支援を担う、地域おこし協力隊「コーディネーター」募集
Q1.山元町で現在活動している協力隊の活動状況を教えてください。
現在活動中の協力隊によるプロジェクトは3つあります。
一つ目は「山元町まるごと観光農園プロジェクト」です。これは、山元町にあるおひさま村農園という果樹などの生産・加工のほか、人々に農業体験を提供する農園と「ミッションパートナー」という形で連携し、関係性の構築やノウハウを学びながら、自ら体験農園を立ち上げ、町内の観光農園と連携して町を盛り上げていくためのプロジェクトを企画・実施する、というものです。
二つ目は「学生ボランティアと地域課題解決を図るプロジェクト」です。もともと山元町には、東日本大震災後復興支援ボランティアを契機として10年以上に渡り、学生ボランティアが定期的に町に来てくれているのですが、一部地域に限定してきた活動の幅を広げ、地域課題解決に取り組んでもらうための施策やアイディアを考え実行してもらうというプロジェクトです。
そして三つ目。これはフリーミッション型のプロジェクトとして、応募者からの持ち込み提案から形になったプロジェクトなのですが、町内にクラフトビール醸造所を作るというものです。クラフトビールを作る過程では「何でも素材として活用することができる」という面白さがあり、地域産品を上手く活用して山元町ならではのクラフトビールができたらと期待し、このプロジェクトをスタートしていただいています。
Q2.今回募集する「コーディネーター」とは、具体的にどのような業務なのでしょうか?
大きく分けて三つあるのですが、まずは「協力隊事業の推進」、「協力隊の採用活動」、そして「協力隊員と地域事業者のフォロー」というものです。
そもそも本事業は下図の通り、人口減少に伴う危機に対する施策として、「人を惹きつける地域になる」。そのための地域おこし協力隊事業と考えています。地域の皆さんとプロジェクトの種を見つけ、それを協力隊として入っていただく方々による新たな視点で形にしていく。そうした積み重ねで町内外の人々が「いきいき・わくわく挑戦できる」地域にしていければと思います。
色々なプロジェクトが形になっていくことで町の魅力が高まり、人が人を呼び込む流れを作り出していきたいという、この事業の大枠をまずはしっかりと理解していただく必要があります。
ただ、このように、協力隊事業を通じた町の将来像は描けているのですが、それを実行していくにあたって細かい部分や、その優先順位は走りながら作っていく必要があります。ですので、ここでの「協力隊事業の推進」では、町のニーズを汲み取りながら、どのプロジェクトから形にしていくべきか等、自治体と密に協議しながら進めていって欲しいのです。
協力隊事業はまだ始まったばかりで体系化していない部分も多く、難易度が高いミッションですが、町の方向性を形にするためのアクションプランづくりに携わる、稀有な機会であると共に、成果が地域の活性化にダイレクトに影響する仕事です。ぜひ、情熱を持って取り組める方とご一緒したいと思います。
続いて「協力隊の採用活動」では、来年度以降も年間5名枠の協力隊を募集する予定なので、プロジェクトづくり、求人募集、採用といった一連の業務の中心的な役割を担っていただきたいと考えています。その際、応募者のスキルはもちろん、キャラクター面でも町や事業者との相性を考慮し、「この人は一緒にやっていける人なのか?」という観点を持って採用活動を実施することが大切だと思っています。
もちろん私たちも採用活動に関わっていきますが、採用業務に関する知見や正解のやり方を知っているわけではありませんので、共にやり方を模索しながら一緒に形作っていくようなイメージです。
そして、協力隊が「活動しやすい環境」にするための受入サポートもお願いします。私たち自治体職員と共に、“町(事業者や住民)と協力隊の中間”にいる存在として、ミッションパートナーである事業者と協力隊の両方にとって、日々の業務や進め方を気軽に相談できる存在となり、彼らの活動が円滑に進むようにサポートをお願いしたいと考えています。
当然まずは、町や地域の方と関係を作ってからなので、2〜3年目以降の役割とイメージしています。
Q3.協力隊が活動しやすくするための「受入サポート」とは、具体的にどのようなイメージでしょうか?
複数名の協力隊を迎え入れるのは山元町として初めてのため、整備されていない部分も多く、彼らの活動レポートや経費申請の方法など、それら管理体制にもまだまだ検討の余地があると思っています。これは実際に行った改善策の一例ですが、協力隊は月次で活動レポートを提出する必要があるため、毎日私にLINEで日報を書いて送ってもらっていたのですが、そのやり方だと、双方に不要な手間が掛かってしまっていました。そのため改善策として、Googleフォームを活用してフォームに入力をした日報が自動でエクセルに転記され、報告書が作られるという仕組みを作りました。
このように、協力隊に関する日々の業務効率化も意識をした仕組みづくりと、その改善を繰り返し、新たに山元町に来る方が活躍できる環境整備を共に実施いただきたいと思います。
Q4.前年度の採用活動を通して感じた課題感があれば教えてください。
応募総数やレベル感は、初年度にしてはなかなか良い手応えだったと思います。ただ、今回協力隊として着任することになった4名のうち3名が、地域事業者からの紹介など、過去に何かしらの形で山元町に関わったことがある方という結果になりました。やはり山元町と繋がりが薄い方は、そもそも移住を伴う地域おこし協力隊への参加は少しハードルが高いようです。そのため、引き続き町としての交流人口を増やす取り組みは行いつつ、山元町地域おこし協力隊が実行する面白い取り組みを、もっと広く多くの方に知ってもらうことで「自分も山元町で何かやってみようかな」と思ってもらえるような流れになったら理想だなと思います。
また、去年の採用では、応募者の面談・面接は全て町の職員で行い、実際のプロジェクトに関わっていただくミッションパートナーの方々とは、内定が決まった後にご紹介するという方法を取っていました。ただ、この方法だと応募者と現場との相性にミスマッチが生じる可能性があると思っています。そのため、選考中のどこかのタイミングで事業者の方々にも会ってもらい、お互いの相性を確認した方が良いのではないかという案もありました。
そういった意味ではまだ私たちも正解のやり方を持っているわけではありませんので、いろいろと試行錯誤しながら進めていかなければなりません。
Q5.コーディネーターの仕事では、どのような働き方になるのでしょう?
今回の募集は、業務委託という形での雇用契約になるため、役場の中に席を設けてそこで働く、といった働き方ではありません。もちろん定期的に役場には顔を出していただいて、私たちとコミュニケーションを取りながらにはなりますが、自宅や町内のいろんな場所をフィールドにしながらミッションに取り組んでいただければと思います。
もちろん、着任したらまず前年度の協力隊採用支援を行ってくれた(一社)地域人財基盤と私たちから、これまでの事業の経緯や取り組みをしっかりとお伝えします。また、現在活動中の協力隊や地域事業者の方々への顔合わせも私たちが間に入ってお繋ぎして、安心してスタートを切れるよう最大限サポートします。
Q6.このポジションで活躍するには、どのようなことをスキルが必要だと思いますか?
やはり人と関わる仕事ですので、地域の人々や協力隊の皆さんと打ち解けることができるコミュニケーション能力は非常に求められると思います。
また、業務の説明でもお話しをしたように、「協力隊員と地域事業者のフォロー」において、適正がある方には、事業者と協力隊の両方にとって、日々の業務やプロジェクトの進め方について気軽に相談できる存在になっていただきたいので、信頼関係の構築ができる誠実さも持っていて欲しいですね。あとは地域の空気感や環境に馴染んでいける柔軟性もあると良いなと思います。新たな取り組みを推進する一方、良くも悪くも“地方ってこうだよね!”というように、「郷に入れば郷に従う」という考え方を持っていて欲しいなと思います。
Q7.最後に、山元町の地域おこし協力隊として持っている展望を教えてください。
繰り返しになりますが、協力隊の活動や実行するプロジェクトを通じて、山元町が「人を惹きつける地域」になり、これらの取組みが人々から「なんだか面白そう!自分も何かやってみよう!」と思ってもらえる、人が人を呼ぶサイクルを作りたい、というのが山元町地域おこし協力隊事業です。
現在活動1年目の協力隊たちも、ここから2年目、3年目になるにつれて、彼らのプロジェクトが事業の芽としてどんどん成長していくでしょうし、そこにまた新たな協力隊に来てもらうことで、山元町の魅力がどんどん増え、広がっていくはずです。また、ミッションパートナーとして関わってくれる事業者の皆さんは、地域活動に非常に熱心で勢いもあるので、協力隊とタッグを組めばすごい力を発揮してくれると思います。
大変な仕事ではありますが、これまでの山元町にはなかったものを作り出すプロジェクトを推進していくことは、ここにしかない面白さだと思いますし、町としてはそんな機会をしっかりと作り、その事業の種を育てるサポートをしながら、人々から興味を持ってもらえる地域を一緒に作っていきたいと思います。私たちと一緒に、情熱を持って取り組んでいただける方からの応募を、ぜひお待ちしています!